第48回 著作者人格権の不行使特約(2)

第47回コラムのつづき)そこで、著作物利用許諾契約や著作権譲渡契約において、著作者が著作者人格権(特に同一性保持権)を行使しない旨の「著作者人格権の不行使特約」を定めることがあります。これにより、当該契約のライセンシーや譲受人が、当該著作物を改変するたびに、著作者に同一性保持権の侵害の有無を確認するという煩瑣は解消されます。

 もっとも、このような著作者人格権の不行使特約が有効か否かについては、著作者人格権の一身専属性から、実務上、結論が出ていないので、訴訟となった場合に、当該特約の有効性が争われる可能性があります。また、契約(特約)の効力は当事者間にしか及ばないので、当該不行使特約を著作物利用許諾契約や著作権譲渡契約で定める場合でも、当該契約の当事者であるライセンサー(利用を許諾する者)や譲渡人(著作権を譲渡する者)が著作者でなければ、当該特約は意味をなさず、前述した煩わしい確認作業をする可能性があります。ライセンサーや譲渡人が著作者でないことは、しばしばあるので注意が必要です。