第47回 著作者人格権の不行使特約(1)

 著作物利用許諾契約や著作権譲渡契約において、ライセンシー(利用の許諾を受ける者)や譲受人(著作権を譲り受ける者)が著作物に改変を加えることを予定している場合があります。この場合、まず、当該契約において、ライセンシーや譲受人に翻案権(原著作物から二次的著作物を創作する権利 著作権法27条)を設定・譲渡する条項を規定します。

 しかし、これだけでは、ライセンシーや譲受人は、著作物を自由に改変することはできません。なぜなら、著作者に、著作者人格権の一つである同一性保持権(著作物を著作者の意に反して無断で改変されない権利 同法20条)が残っているからです。しかも、著作者人格権は、著作者のみに帰属する権利なので(一身専属性 同法59条)、当該契約において、著作者に著作者人格権の譲渡や放棄をさせることはできません。そのため、著作物を改変する場合は、その度ごとに、ライセンシーや譲受人は、同一性保持権を侵害するか否かを、著作者に確認しなければならない可能性があります。(第48回コラムにつづく)