第36回 著作物利用許諾契約と差止請求

 例えば、ある著作物について、独占的利用許諾契約(第35回コラム参照)が締結されているにもかかわらず、第三者が無断で当該著作物の複製物を販売する等の著作権侵害をした場合、ライセンシー(著作権者から当該著作物の利用の許諾を受けた者)は、この第三者の著作権侵害を止めさせなければ、多大な損害を受けるおそれがあります。

 しかし、著作権者は、著作権侵害に対する差止請求権を有していますが、ライセンシーは、これを有していません(著作権法112条)。また、著作権法上、著作権者は、ライセンシーのために、差止請求権を行使しなければならない義務はありません(尚、ライセンシーによる著作権者の差止請求権の代位行使の可否・要件については、実務上争いがあります)。

 そこで、独占的利用許諾契約書において、著作権者に対し、著作権侵害を排除する義務(侵害排除義務)を規定することがあります。これにより、第三者が著作権侵害をした場合、著作権者は、ライセンシーのために、差止請求権を行使する等の義務を負うことになります。