第15回 段階的・継続的な秘密保持契約

 秘密保持契約においては、秘密とすべき情報の [1]特定 と [2]網羅 が必要です。しかし、秘密とすべき情報は、従業員や取引先との関係が進むにつれて、徐々に具体化するものなので、特定には、複数回の秘密保持契約が必要といえます。また、秘密とすべき情報の定義を「一切の情報」と規定すべきでないため(第14回コラム参照)、網羅させるには、秘密とすべき情報の例示が必要ですが、1回の秘密保持契約で、例示を網羅させることは、困難です。

 そこで、秘密保持契約を段階的・継続的に行うことで、この二つの課題をクリアーできると考えられます(松村幸生「明確・最適な秘密保持契約のための条項例18」(Business Law Journal 2011年3月号)35頁、経済産業省「営業秘密管理指針」52~53頁、60頁も同旨)。すなわち、従業員や取引先との関係の進展に応じて、随時、秘密保持契約を締結し、秘密とすべき情報を特定していきます。また、何回か秘密保持契約を重ねて、秘密とすべき情報の例示を増やしていくことで、秘密とすべき情報を網羅させることになります。