第14回 秘密保持契約における「秘密」の特定

 秘密保持契約書において、網羅的に秘密を守らせようと、秘密とすべき情報の定義を「一切の情報」と規定しているものが散見されます。しかし、このような規定については、[1]抽象的で漠然とした秘密の定義条項は、保持すべき秘密の範囲が明確でないため、過度に広範な規定として、公序良俗(民法90条)違反とされ、秘密保持契約自体が無効となる可能性があること、[2]不明確な定義条項を有する秘密保持契約は、秘密情報の管理が不十分といえ、不正競争防止法の「営業秘密」(2条6項)たり得ず、法的保護を拒絶されるおそれがあること等が、指摘されています(松村幸生「明確・最適な秘密保持契約のための条項例18」(Business Law Journal 2011年3月号)33頁、経済産業省「営業秘密管理指針」50頁、同59頁参照)。したがって、秘密保持契約では、秘密とすべき情報を特定する必要があります。
 もっとも、秘密とすべき情報を具体的に書きすぎると、秘密保持契約書自体から、秘密が漏れる可能性があるので、秘密とすべき情報の特定の方法には工夫が必要です。