第19回 電子書籍の出版と契約

 近年、電子書籍による出版が進んでいます。電子書籍の出版には、[1] インターネット配信等によるオンライン型と、[2] CD-ROM等の媒体によるパッケージ型があります。
 ところで、著作権法(80条1項)は、出版権を、「文書又は図画として複製する権利」とし、その対象を紙媒体に限定しています。そのため、既に紙媒体で著作物について出版権設定契約をしている場合でも、同一の著作物を電子書籍として出版するには、改めて、著作権者と出版社との間で、当該著作物の、複製及び公衆送信等([1] オンライン型)又は複製及び譲渡等([2] パッケージ型)を許諾する契約を締結する必要があります。また、今後、紙媒体と電子書籍の両方を出版する場合は、契約書に、紙媒体のための出版権の設定と、電子書籍のための複製・公衆送信・譲渡等の許諾に関する規定を盛り込むことが必要です。
 電子書籍の出版は、まだ始まったばかりで、法整備がなされておらず、権利処理等に関するトラブルが生じる可能性が十分にあるので、事前の契約が一層重要となります。