第13回 退職者との秘密保持契約

 退職者に、会社の営業上の秘密を守らせる必要がある場合には、退職者と秘密保持契約を締結すべきであるといえます。なぜなら、[1] 退職者が、従業員と同様の会社に対する信義則上の秘密保持義務(第12回コラム参照)を負うかは、実務上に明らかになっておらず、また、[2] 就業規則の退職後の秘密保持に関する規定は、文言が抽象的であるため、対象となる秘密を特定できない等、法的に不十分な場合があるからです。

 また、退職者との秘密保持契約には、秘密の保持を実効的なものにするため、競合関係にある会社への再就職を禁止する競業避止義務に関する規定を設けることがあります。しかし、このような規定は、職業選択の自由(憲法22条1項)を制約するおそれがあるため、競業を禁止する職種・期間・場所的範囲の限定がない場合や、秘密保持のための金銭の交付等の代償措置がない場合は、公序良俗(民法90条)違反として無効となる可能性があるので、注意が必要です(奈良地判昭和45年10月23日、大阪地判平成10年12月22日参照)。