第12回 従業員との秘密保持契約の動向

 従業員は、契約書がなくとも、会社に対して、労働契約に基づく付随的義務として、信義則上、会社の営業上の秘密を保持する義務を負うとされています(東京高判昭和55年2月18日参照)。このことから、これまでは、従業員と会社との間での秘密保持契約は、取引先との秘密保持契約に比べて、それほど重視されてきませんでした。
しかし、近年では、[1] 従業員との秘密保持契約(誓約書)の存在を理由に不正競争防止法で保護される「営業秘密」(2条6項)の要件である秘密管理性を肯定する裁判例が出てきたこと(東京地判平成17年6月27日等)、[2] 従業員からの営業秘密の流出が増加したため明文で従業員に秘密保持を自覚させる必要が生じたこと、[3] 秘密保持契約により退職者にも秘密保持義務を負わせるべきであること、[4] 平成20年3月に施行された労働契約法で「労働契約の内容についてできる限り書面により確認する」(4条2項)としていること、[5] 会社の知的財産への意識の高まり等から、従業員と秘密保持契約を締結する会社が増えています。