第3回 出版契約(その3)-原稿買取り-

 出版業界では、「原稿買取り」ということが行われています。しかし、この「原稿買取り」は多義的に使用されているようです。まず、[1] 著作権使用料の支払いを、販売部数で支払う印税方式ではなく、追加の使用料を支払わない一括支払いという意味で「原稿買取り」ということがあります。また、[2] 原稿の著作権を、著作権者から出版社に譲渡する意味でも「原稿買取り」ということもあります。

 そして、著作物を出版する際に、「原稿買取り」の意味が不明確であると、トラブルとなる可能性があります。この場合、当事者が、「原稿買取り」について、[1] 原稿料の一括支払いと [2] 著作権の譲渡のどちらの意思で契約したのかを、裁判で判断することになります(東京地判昭和50年2月24日参照)。
このような「原稿買取り」についてのトラブルを避けるためにも、著作者と出版社との間で、出版契約書において、「原稿買取り」の意味を明確にしておく必要があります。